風待ち月

ゆらゆらと揺れる日々の気持ちを風に乗せて

ざわつく

今日も雨が降って

ペンが進む

使わなくなった万年筆の  筆跡に残るインクの流れが好きだった

手書きの文字の強弱や気持ちがのったような走り書き

いと惜しい

遠い記憶

青色と脆さと痛みを描いた小説は

読み易さと

死の平等をお思い出させてくれた人だったので

勢いこんでいたのに退屈で

面白くないのに引っ掛かって

夜を延長させている

こうやって思い返す

毎日に一生懸命に冷たい自由の海を泳いでた

とりつくしまもなくて

傷つけて傷ついて  傷ついたふりをしては傷つけて

胸がざわつく

いまもまだ  飛びたいって想う

風待ちの港の話や二日月という銅版画

 

日常は目まぐるしく

その日常ゆえにしあわせの本質をみる

繰り返しのようにする奥様とのケンカはきっと

いつか想い出しては笑えるしあわせの1ページになる  いまはとても腹立たしくても

青い記憶は痛くて脆くて美しい

そしてきっと薄れて消えていく

色褪せても千切れても思い出せない事が増えても

あなたとのいまは

あなたたちとのいまは

きっといつでもそばにある

 

 

 

深呼吸

雨になると

心が少し落ち着くのでしょうか

 

立秋を過ぎた晴れ空が

しっかり秋の高い空だなと思ってた

季節の声はいつも自分勝手で

好きに暑かったり寒かったりするけれど

空の色と陽の時間はきちんとしてる

 

お湯を出すときの

水からお湯に代わるまでの時間や

湯舟のお湯がさめてしまうまでの時間だとか

 

雨つづき

チビ達と流れ星探しをするつもりだった

しし座流星群も雨で流れたし

おうちプールももうきっと出来ない

 

季節は結構しっかりと舵をきったと思う

 

季節だけでなくて

時間がずいぶん経ったなと最近思うようになったのはなんでかな

 

時代に置いていかれているような

道を外したような

 

少し深呼吸が足りない気がする毎日

嘯く(うそぶく)

クーラーをつけないまま朝を迎える

まだ8月の半ばなのに

 

あめつづき

 

音も無く降り続く雨

 

夢のつづきにいるように

目の前が突然現実だと気づく事が増えた

 

 

寝不足の毎日

疲労が溜まって澱んで

 

ある時続けてスタッフが減った職場で

いつの間にか定員は充たされているのに

人手が足りないと声が聞こえる

 

夏バテの兆候

秋バテの予感

 

 

朝陽が出ても薄暗い朝に

 

負けない様に

『負けたっていいんだよ。勝ち負けなんて』

とうそぶいておく

 

 

夏が来た

ゆっくりと

心の底に降りてゆく

 

とん

 

水底に着いた足音

 

ふさ

水底に砂が舞い上がって

 

ゆっくり

寝転ぶカラダに落ちてくる

 

 

静寂という混沌に身を委ねて

 

水面を見上げる

 

おぼろげな鏡に映る姿に

 

 

おかえり

ただいま

 

 

通り雨

はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」

 

手をつないで走りだす

突然の雨が

白い夏の制服をあっという間に濡らして

 

曲がりくねった細道は

深い緑の木々の下

 

坂道を越えて細い橋まで

走っていく

 

 

ふたりの後ろ姿は

いつの間にか

 

俯瞰したように

高いところから見下ろすように

映画のワンシーンを見てるよう

 

ただ見つめて

いつまでも見続けてしまう

 

いまも目を閉じて

 

いつかの夏の通り雨

 

酸欠気味

『酸欠』

 水泳部に所属していたずいぶん昔に

練習の後の帰り道に

深呼吸をして

肺が縮こまっていた事に

しっかり呼吸が出来ていなかった事に

気づく

 

もう一度めの深呼吸

カラダが冷えていた事に

うだるような暑さをして温かいと思う事に

水の中にいたことを想う

 

引っかかった呼吸

冷えた体

滞る血液をして

酸欠という言葉を載せる

 

 

夏の想い出

 

今はときどき

クーラーに埋もれて

 

酸欠気味

遠い日を想ふ